【大学改革の行方 第1話】いよいよ、本格的な大学の淘汰時代が始まる

国内の大学が直面し始める、
18歳人口減少だけでない驚異とは ?

筆者は、30年に渡って、200を超える大学に外部の視点からコンサルタントという立場で支援をする形で接してきた。また、実際に大学・短期大学・専門学校・高等学校の理事として内部の視点から高等教育機関の経営も担ってきた。内部・外部の両面の視点から大学改革の現状とその行方について述べていきたい。

まず、18歳人口の推移が与える大学への影響について触れ、次に人口動態以外の外圧による大学への影響そして、今後の大学の行方を予測してみる。

【1】18歳人口と大学進学率が大学に与える影響

大学のマーケットは、18歳人口の動態と大学進学率に大きく影響を受ける。まず、国内の18歳人口の推移を見てみよう。(図表1)

18歳人口の推移(図表1)

団塊の世代が18歳であった1966年に18歳人口は、249万人(高校卒業者数156万人、大学入学者数29万人、大学進学率11.8%)とピークを迎えた後減少し、1976年には154万人(高校卒業者数133万人、大学入学者数42万人、大学進学率27.3%)となり、この間18歳人口は38%も大幅に減少したが、大学進学率が高まることで大学への入学者数は13万人増加した。その後、団塊ジュニアが18歳を迎える1992年には205万人(高校卒業者数181万人、大学入学者数54万人、大学進学率26.4%)と18歳人口は33%増加し大学入学者数も12万人増加。筆者が、株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に入社した1980年代の大学は、1992年まで続く18歳人口の増加による大学志願数の急増で活況を呈していた。入試の季節では、志願者が激増する大学では教職員に大入り袋(臨時ボーナス)が配られるほどであった。大学に入りきれない層の高校生や専門技能を身に付けたい高校生は専門学校へ進学し、国内の専門学校が大きく成長。文科省(現文部科学省)も大学の定員を臨時に増加することで受験戦争と揶揄された時代を一時的に乗り切る策を講じた。増え続ける大学進学者数を受け入れるために、都心部にある大学が郊外にもキャンパスを設置するなど、大学は拡大を続けていったのである。

1991年には、大学審議会による「大学教育の改善についての答申」で大学設置基準が大綱化され、大学の設置や学部の増設の難易度が下がった。国公私立大学数は、1990 年に507校であったものが、2000年649校、2010年778校、2014年には781校と拡大を続けたのである。大学進学18歳人口の推移予測は、出生者数から推計できるため18年後までの予測が可能だ。したがって、1992年以降18歳人口は大幅に減少し続ける事をどの大学も分かっていた。各大学は、定員数を拡大することで財力を高めるとともに、来る大学淘汰の時代を乗り切るために、偏差値における高いポジションを狙い熾烈な競争を行っていた。

増加し続ける大学数、かたや1992年以降にはじまる18歳人口の止めどない減少予想。当時の各大学の経営陣は、危機感をもって大学改革を推進した。学部・学科の改編、キャンパスの施設・設備の刷新、入試改革、学生募集広報戦略の進化、都市部へのキャンパス移転などの手を打ち改革を推進してきたのである。当時外部の視点から改革を推進する現場にいた私にとってその改革のスピードは遅々としており、本質的改革というより、包装紙をきれいにするような改革に終始している感覚を覚えていた。つまり、小手先の改革が志願者増につながっていたからである。

その背景には、予想を超える大学進学率の高まりがあった。大学進学率は、学費の関係から30%程度が上限だろうと数多くの識者が述べていたが、予想以上に増加。短期大学の大学転換とともに、特に女子高校生の大学進学率が大きく高まったのである。2014年の18歳人口は118万人(高校卒業者数105万人、大学入学者数61万人、大学進学率51.5%)と、1992年に比較すると18歳人口は、42%も減少。しかし、大学入学者数は、7万人増加した。これは、大学進学率が26.4%から51.5%に倍増したためである。各大学は、18歳人口は確かに減少していたが、実際の志願者数は拡大し続けたため危機感は、早々に薄れていった。

そんな中、志願者を伸ばす大学と入学定員割れの大学の二極化が進む結果となった。1990年台は、入学定員割れをしている私立大学数は、平均20校5%程度であったが、1999年から急増した定員割れは、近年では、250校・45%程度まで高まっている。しかも定員割れが多い大学は、地方にある小規模大学に集中しているのが現実だ。

私立大学入学規模別入試実態

入学定員規模別私立大学比率(図表3)

入学定員規模別志願者比率(図表4)

志願者数の寡占化も進んだ。日本私立大学振興・共済事業団「平成27年度 私立大学・短期大学等入学者動向」(図表2.3.4)によると、集計対象となった579校の私立大学入学者規模別の構成は、入学定員1,000人未満の大学が451校で78%、1,000人~3,000人未満が105校18%、3,000人以上が23校4%となっている。しかし、志願者総数351万人の規模別シェアは、入学定員1,000人未満の大学が18%、1,000人~3,000人未満の大学が37%、3,000人以上が45%を獲得。つまり、たったの4%しかない23校の大規模大学が、なんと志願者の45%を獲得しており、残りの55%の志願者を小中規模の556校(96%)が奪い合っているという構図となっているのだ。

大規模大学は、都市部にある伝統的なブランド大学が多く、偏差値も上位に位置しており確固たるポジションを築いてきた。そして、定員増を伴う新設学部・学科改編を行うことで拡大を続けてきたのも大規模大学であった。偏差値上位に位置する大規模大学が、定員増を伴う改革を進めると、下位大学から入学者が吸い取られる「ストロー現象」が起きると筆者は過去から予測してきた。まさに、それが現実となっているのである。その反面、小中規模の大学は、人口動態や行政の施策に左右され、改革を推進してきた大学と取り残された大学とに分かれてきた。つまり、大規模大学・改革が進んだ大学と定員割れから脱却できない大学に二極化したのである。

【2】大学淘汰を進める外圧

  “18歳人口のさらなる減少”

それでは、今後起きてくる大学への外圧について考えてみたい。 まず、第一の淘汰の外圧は、2018年問題と巷で語られている18歳人口のさらなる減少である。図表1で見たように、18歳人口の推移は、出生数から18年後まで予測が可能だ。 2 015年の120万人が、10年後の2025年には109万人(11万人減)、16年後の2031年には99万人(21万人減)まで減少する予測だ。もし、今と変わらず18歳人口の約半数が大学に進学すると仮定し、入学定員規模別の私立大学数から、以下の規模感のインパクトが予測される。(図表5)

18歳人口減少時の影響計算表(図表5)

2025年までに11万人(大学進学者数5.5万人)18歳人口が減少すると、入学定員400人以下の大学が全国に287校あり、そのほとんどの入学定員分が消滅するというインパクトがある。2031年には、21万人(大学進学者10.5万人)減少するので、入学定員600人未満の大学378校の入学定員数に匹敵する大学進学者が消滅する計算となる。

もちろん実際は、小規模大学だけが影響を受けるわけではないが、大きな影響を受けることは間違いないだろう。

大学改革に着手しその成果が表れ、社会的な評価を得るまでに20年かかるというのが通説である。改革スピードを速めても10年はかかるであろう。また、今年入職した教職員は、定年まで後40数年間は、大学で働くことになる。6年から7年の中期ではなく、長期レンジの将来予測も視野に入れることが必要だ。

ここでは、さらに長期レンジで18歳人口の推移を予測しておきたい。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」出生中位(死亡中位)推計より2100年までの18歳人口の推移を見てみよう。

18歳人口の長期推計(図表6)

出生を中位と仮定した推計でも、20年後の2035年には、88.9万人(2015年比較で31.1万人減、大学進学率50%で私立大学450校分の入学定員分)、30年後の2045年には、75.6万人(44.4万人減、私立大学500校分の入学定員分)、40年後の2055年には、68.6万人(51.4万人減)まで減少し、2100年には、34.8万人まで減少の一途をたどる。

少子化対策が功を奏し、出生率が上昇に転じても、その効果が大学入学者に反映されるのは18年後だ。いずれにしても大学のマーケットはさらなる縮小の外圧が避けられないのが現実だろう。

そんな予測が成り立つ中、大学のマーケットの維持・拡大のためには、様々な方向性が考えられる。

<シェアの最大化>

  • 国内のレッドオーシャンを勝ち抜く

<募集エリアの拡大>

  • 海外からの日本へのインバウンド(留学生)を獲得する
  • 海外へ進出し海外の人材を育成する

<年齢軸の拡大>

  • 18歳以外の社会人マーケットを拡大する

<時空を乗り越える>

  • 通信教育で海外・社会人向けのマーケットを開拓する

などが考えられる。

しかし、改革の現場にいる筆者は、2018年問題に直面している大学に危機感のなさを感じている。振り返ると1992年以降18歳人口が減少することが分かっているが、本質的な改革が進まなかった日本の大学。その時と同様に。

各大学で策定している中期計画は、6年7年という時間軸である。また、オーナー系の大学を除き、大学経営層の任期は短く、長期レンジでの改革の推進まで視野が広がらないのが現状だ。短期の募集にやっきになって小手先の入試改革や学部・学科改組を主軸とした改革を行ってきた大学。本質的なアウトカムを最大化するための教育改革がなかなか進んでこなかった。2018年以降を間近に控えている今日。18人口減少がせまっているからこそ、短期で成果の出る募集改革に留まらず本質的な教育改革を継続的に行ってほしい。

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